アンドウッドには多種の床材があります。
そして素材となる「丸太」が必要です。
丸太の背景には違法伐採のものもあれば、政府が管理している植林木まで様々です。
そんな丸太は全て「生もの」であり、人間がコントロールをして量を調整できるものではありません。
全ての丸太は尊い存在であると感じます。
そこで、人間と丸太が対等に「相談」をして、製造してみてはどうでしょうか。
床材に限らず、「製品」を作る時には必ず「目的」があります。
では床材を製造する時の「目的」は何でしょう。
それは床材の流行であり、施主・設計者の「需要」です。
先ほど述べたように製造へ至るプロセスは、「需要」→「製造」→「製品化」です。
しかしこれでは「需要」ベースに「製造」をしてしまい、丸太と「相談」する余裕が少ないのです。
丸太に無駄が出てしまい、端材が多く残ります。
我々は考えます。
丸太のポテンシャルを全て出せる製造をしたらどうかと。
そこで丸太と「相談」します。
丸太にも色々な種類があります。
まずは「品種」。
オークであったり、チークであったり、杉であったり。
目の回るほどの種類がこの世の中にはあります。
今回はチーク、それも「植林木」に限定して話を進めます。
この写真のチークで、樹齢は40年~60年ほどです。
そして、チークの先端方面に位置する丸太です。
我々はこの丸太が気に入りました。
主な理由として、「未来」にも存在し得る「植林木」だからです。
今回の試みは「実験」的な意味もあります。
未来に存在しない「丸太」を使っては、今回の「実験」が無駄になります。
さて、この丸太と相談して、どんな床材が生まれるでしょう。
歩留まり計算の目的は、1本の丸太に対し最も「価値」のある割き方を導き出す事です。
今回の割き方の「目的」は、「歩留まり」のみにスポットを当ててみます。
少し乱暴な言い方をすると、「価値」である「需要」を無視しています。
結果、どんな床材が出来たのでしょうか?
長さが1820mmとありますが、この写真のように長さがバラバラの「乱尺」で採ります。
そして、この写真の様な形状の断面にして、長さ方向に繋ぎ合わせ1820mmの長さに製造します。
あらかじめ、つなぎ合わせた方が施工性が良くなります。
一見、この記載ではどんな形状の床材か判りづらいかと思います。
下記の様な形状にするんです。
「パーケット」や「寄木」と言われる形状の床材です。
日本では、この様な模様を「市松模様」と呼んでいます。
クラシカルなデザインの中に、独特の木取りで出た白太まじりの模様は秀逸かと手前味噌ですが感じます。
弊社ではこれを4枚合わせた「4Pパーケット」と名付けています。
この形状は「ヘリンボーン」として認知されている形状です。
この写真のように、3本を重ねたトリプルヘリンボーンにもできる汎用性の高い形状でもあります。
※もちろん、通常のシングルもできます。
なかなか珍しい形状では無いですか。
下記の様なフローリングです。
少し細くなることで、より繊細なイメージになります。
一本一本に溝を入れる事により、一枚のブロック感が出て、より「手作り感」が出たと思います。
こちらは「7Pパーケット」と呼んでいます。
先ほど紹介した40mm幅の形状よりも、さらに細くなったものです。
これも一本一本、溝を入れます。
非常に手間はかかりますが、溝は有る方が「手作り感」を楽しめます。
なんとなく、暖かい気分になると思うのです。
溝があると無いのでは、「価値」が変わるのではないでしょうか。
その為の手間は惜しみません。
こちらは「9Pパーケット」です。
この形状では、2種類の幅のフローリングを混ぜて製造してみます。
下記の様な形になりました。
一枚の形状を、巾303mm x 長909mm x 厚12mmに素材を集めて製造します。
そして長手方向への溝を入れます。
これは特に珍しい形状の床材で、色々な使い方が今後検討されそうです。
形状の詳細は下記リンクをご確認ください。
通常であれば使えなく燃料にされてしまうような素材です。
数量をまとめて、丁寧に加工をすれば下記のような建材に生まれ変わります。
穴が開いていたり、ササクレがあったりと、選別が非常に困難です。
ある程度のルール決めをして、使える部分だけを切り取り、製造します。
とにかく、手間がかかります。
壁に使うとインパクトのあるものになります。
どんな素材も、手間かければ素敵に化けるんです。
以上が、一本の丸太から採る床材(壁材)の一覧です。
ほぼ余すところ無く採れました。
メリットとしては、資源である「丸太」を有効活用できること。これに尽きます。
また若干ですが、「材料費」を抑えることができます。
デメリットは意外に多いです。
多いので下記に箇条書きにします。
・需要の少ない建材を広く告知しなくてはいけない。
・需要が出るまで在庫しなくてはいけない。
・細かい素材を集めて作るので、加工手間である人件費がかかる。
・製造の打ち合わせに時間がかかる。
・製造の為のまとまった現金が必要になる。
上記に述べたように、「コスト」が非常にかかります。
また販売が思うように進まないと、会社の資金繰りも悪くなり非常に危ない橋を渡る羽目になります。
これだけ多くのデメリットがあります。
それにも係わらず何のために「相談」するのか?
「未来」への丸太の為。
今までに使われなかった素材で新しい建材を作り、「需要」を作る事は「未来」の丸太の歩留まりを上げることができます。
このノウハウが世界に広がれば有効活用が底上げ的にできます。
その効果は絶大です。
「雇用」を生む為。
今回の様に丸太を歩留まり良く採ると、「雇用」を多く生みます。
木目を見ながら選別や加工をするので、今の所は人の手に頼らざるを得ません。
機械に労働を奪われる世の中、これは非常に喜ばしい事です。
「楽しい」から。
実は、これが一番の理由です。
新しい建材づくりは発見が「楽しい」ものです。
不真面目に見られる事もありますが「楽しい」空間づくりの為に使われる建材です。
「楽しい」気持ちと一緒に製造して問題ないはずです。
丸太と「相談」することは新しい「価値」を生み出す可能性を秘めます。
今の「需要」を見る事は経営の上で重要ですが、時には丸太とゆっくり話すのも良いでしょう。
丸太には人間の知らないアイデアがまだ眠っている気がしてなりません。