自身の常識を疑う

海外と商売をしていると、時に信じられないほど驚かされることがあります。

以前、苦労してデザインした床材が、ある日突然、そっくりそのまま他社にコピーされていたことがありました。

日本の感覚では、道徳的にも到底許されない行為に思えます。

しかし、それは“日本の常識”にすぎません。
海を渡れば、そうした道徳は必ずしも通用しないのです。

あるとき、国外の友人と他社の新商品の話をしていた際、彼は平然とこう言いました。

「Why not? Just copy it.」

まったく悪びれた様子も、恥じる素振りもありませんでした。
むしろ、恥と感じる自分のほうが異常なのかと思うほどです。

※もっとも、性格的に私はコピー品を作るようなことはできませんが…

私の師匠から、今も心に残る言葉をいただいたことがあります。

「遠藤君、海外と商売するということは、君が“日本の文化”と“海外の文化”の緩衝役になるということや」

まさにその通りで、私は“緩衝役”なのです。

板挟みになって腹立たしいことも、声を上げたくなるようなこともあります。
それでも緩衝役になること、それが私の仕事です。

 

気づけば、すっかり髪も白くなってしまいました。